2019年12月27日
ゆる美は百貨店でしめ飾りを買った
こだわりは稲穂
稲穂がついていない物は
どんなに美しくても可愛くても
買わない
理由は願いを叶えるため
いつの頃からか
飾る時願いをかける様になっていた
「どうか今年も
食べ物に不自由しませんように」と
意地汚くも、切実で、生き物としての
正直な願い
稲穂があればそれが叶う様な気がしていた
しめ飾りは年神様を迎えるための準備で
願かけをするための物ではない
それでも
今日まで生活してこられたのは
このお陰かも知れない
迷信深いゆる美はそんな気がして
こな習慣を止めることが出来ない
翌28日
玄関先に願いを込めて飾った
雲の切れ間から冬の柔らかい陽射しが
降り注いだ
テレビでは堺市の教員の残った給食持ち帰り問題を食品ロスの問題と絡めて報道している
一方では余った食べ物を廃棄し
一方では食べたくても食べられない人がいる
ゆる美は今さっき願った事が少し
後ろめたく感じられた
「みんなが食べ物に不自由しませんように」
と願うべきだろうか
生きている限り食べる事から逃れられない
腹一杯食べたいし
たまには贅沢な美味も味わいたい
そんな事を考えること自体罰当たり
なのだろうか
考えながら手はおやつに伸びていく
ピーナツチョコの甘さが口いっぱいに
広がって
思考が停止した
*一部フィクションを含みます